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「やった……やったぞ! 俺は勝った!」
「すごい! 本当に勝っちゃうなんて……やっぱりシロウはすごいよ」
「まったく世話のかかる人だ! だけど、本当によくやってくれたな」 それにしても、本当によく勝った。
「シロウ! 本当に勝ったんだね! 本当に……本当に!」
死闘の戦いだった。一度は死んだ俺が復活して再び打ち破った。
これは紛れもない奇跡と言えるだろう。俺は相手のステータス画面を確認すると、赤色となっており、後は俺がコマンドの『転移』を選択するだけの状態だった。
そして、俺はアカギの敗北によって周りの水がなくなっていくことに気が付いた。今度はあの水を出したライオンの置物が、水を吸い込み瞬く間にこの場の水はなくなった。
もう少しで酸素ゲージも尽きるところだった。危なかったな。
あのアカギの魔法から解放されたエリザはまっさきに俺に駆け寄ってきた。とても、心を踊らせるように喜びながら俺に抱きついてきた。
ひまわりのように明るいと言った方がよいか? とにかくさきほどのエリザとは違って、いつものエリザが戻ったような感じでした。
「……よくやってくれた、感謝している」
「ああ……なんとかだけどな」
「私はあのときあなたは負けると思っていた、私も倒せない相手があなたに倒せるはずがない……そう思っていた」
そんなことを思っていたのか。確かにシェリーの言う通りだ。俺にはまだアカギという男に挑むのははやすぎた。
今回だって、エリザがいなかったら死んでいた。だから、シェリーの言うことは間違ってはいなかった。
「ただ、あなたは私の想像以上の実力を本番で発揮してくれた……そして、こんな裏切り者の私のために戦ってくれた……」
「何を言っているんだ? さっきも言っただろう……お前は昔の自分を変えたくて、今ここにいるんだろ? だったらそれでいいじゃないか! お前はもう赤い雨じゃない! 俺たちの仲間だ!」
「う……そうか、あ、あり……」
「あ? あり?」
「な、なんでもない!」
「そうか? それならいいんだけどな」
俺はシェリーの方を見ると若干表情が赤くなっていることに気付いた。何を恥ずかしがっているのか分からなかったが、俺はこれ以上はシェリーには何も言わなかった。
そして、俺は少し離れたところで倒れこんでいるアカギに近づいて行った。
「……負けたのか」
「ああ、一度は俺もあんたに負けた……引き分けといったところだろうな」
「ばかやろう……最終的にこのフィールドに立っていたやつが勝者なんだよ! お前もそれは分かっているだろう?」
アカギは今にもかすれそうな声で俺にこう問いかけた。
デュエルは最終的には立っていたやつの勝利だ。俺はそんなことを思いながら、倒れこんでいるアカギにあのときの約束の話を持ちかけた。
「さてと……約束通り、ギルド赤い雨の解散……そしてお前たちが持っている『青いカケラ』を渡してもらおうか」
「たく……倒れている相手に追い討ちをかけるな」
「それでもあんたほどの鬼畜じゃないことは確かだと思うが?」
「それもそうだな……ほら、これが一つ目のカケラ『青いカケラ』だ」
すると、アカギはゆっくりとステータス画面を開き操作していた。そして、しばらくすると俺のアイテムインベントリにアカギからアイテムが届いた。それは、とてもキラキラと輝いており見ているだけで、心が奪われそうなほどにその青いカケラは素晴らしいものだった。
すごい……今まで見てきたどんな宝石よりもきれいだ。ゲームでは青いカケラなんていくつも手に入れたが、やっぱり自分の目の前にあるとこんなにも違うものなのか。
俺はそんな青いカケラに感動していると、後ろにいたエリザもこの輝きに感動しており、触らせてなど言ってきた。騒々しいな……まあ、女子はこういうものには目がないものか。
「……これが青いカケラ! 食えるのか?」
「は? いや、カケラなんですけど」
一人訳の分からないやつがいるけどな。
そして、アイテムである青いカケラを受け取った後、アカギはついに自分がここまで作り上げた『赤い雨』を解散するようだ。
「まさか……このギルドを解散するときがくるなんてな」
「……それは仕方がない、自業自得だろ?」
「ふん! それもそうか……」
アカギは少し笑いながらステータス画面の中からギルドのメニュー欄を開いた。
そして、ゆっくりととした手つきでギルドの解散手続きをしていった。
最後に『本当に解散しますか?』というところで、一瞬だけその手が止まったがアカギはその場で少し息をついてから、『解散』を指先でタッチした。
「……なに? この音?」
「鐘の音か? 方向からしてギルド本部のようだが……」
しばらくこの部屋に謎の鐘の音が響いていた。
ゴーン、ゴーンというような鐘の音は、とても印象的で何が起こっているか分からなかった。
その鐘の音がこうこうと響くなかで、アカギは静かに俺たちにこう説明した。
「これは俺たちの『赤い雨』の解散の合図みたいなものだ……仲間たちに解散したということを伝えるため……そして、俺と一緒に暮らしている家族に俺の死を伝えるためだ」
「家族!? あんたこの世界に家族もいたのかよ!」
「そ、そんな……でも一体どうしてですか?」
「どうせ、最後だ……お前たちに話してやるとするか」
すると、アカギは俺たちに最後ということで家族のことを話し始めた。
「俺たちは三人家族でとても幸せな生活を送っていた……ただ、ある日俺は務めていた会社をクビになった」
「でも、それでも諦めなければ……」
「俺も最初はそうすれば必ず救いの手が俺たちを助けてくれると思っていた……だけど、世間は俺の想像以上に冷たかった! 俺にはもう生きる気力がなくなっていた」
そして、このアカギから話されたその後の内容は会社をクビになった後は、就職先を転々としており人間関係などで会社をやめてしまうことがほとんどだったらしい。
それからというものの、パチンコや酒に溺れる日々で家族には迷惑しかかけていないという話しだった。
俺たちはそんなアカギの話を黙り込んで聞いていた。
シェリーはこのアカギの秘密を知らなかったらしい。
そして、エリザはどこか悲しげな表情でそんなアカギを見ていた。
「金もなくなり、借金を作っていた俺は毎日家にヤクザが家に押しかけてきてよ……ある日、俺から家族は離れていってしまった……最後の言葉は『元気でね』だったけな」
聞いているだけで俺はつらい気持ちになった。このアカギという男にこんな過去があったなんてな。
かなりこの仮想の世界では現実的な話。
この男は俺以上に背負っているものがあったんだ。
「全てを失った俺は……雨の日川に飛び込んで死んだ……ただ、そのはずみかは分からないが、この世界に来たというわけだ……そして、今度こそ俺は絶対にこんなことにならないように力だけを求めて……同じ境遇のやつらを集めて『赤い雨』というギルドを作ったというわけだ」
「じゃあ……シェリーさんも」
「……そうだ、私も両親に捨てられたという過去だった……あれは激しい雷雨の日だったか? まあいい……もう私は昔のことなど気にしていない」
赤い雨というギルド。それは今まで完全なる悪のギルドだと俺は思っていた。ただ、アカギという男はこの世界にいる家族にギルドで稼いだお金の一部は養育費代わりとしてかかせずおくっていたらしい。
それも、匿名で……今までさんざん迷惑かけた償いとして。そして、自分は悪に染まり家族には迷惑をかけずにいたらしい。くそ……なんていい男だよ。
確かにやり方としては間違っていると思う。他の人に迷惑をかけたりするのもどうかと思う。
だけど、俺がもしこのアカギと同じ状況になってどうするだろうな?
考えられない。
そして、シェリーがなぜこの赤い雨というギルドの一員になったのか。今なら分かる気がするぜ。
「さぁ……俺を『転移』させてこの世界から抹殺しろ!」
「本当にいいのか? あんたの家族はどうする?」
「きっと俺がいなくても幸せにやっているだろう……それに俺は約束は守る男だからな……」
「……最初の相手があんたでよかった、いろいろと学ばせてもらった」
「ふん……それはよかったな……最後に俺の家族に会いたかったら、そこの街に行けよ……お前のメッセージボックスに送っといてやる」
俺はアカギから最後の手土産である家族の住所を教えてもらった。
メッセージボックスにはアカギの家族がいる街の名前や地理情報などが細かく書かれていた。
そして、最後にアカギは俺に対してこう言った。
「最後にお前は必ず強くなる……そして必ずカケラを集めろ」
「……言われなくてもそのつもりだ」
「それじゃそろそろ……『転移』のコマンドをタッチしろよ」
俺はアカギのその言葉てステータス画面から『転移』をタッチした。
そして、アカギは最後笑いながら赤い光とともにこの場から消えていった。
こうして、赤い雨との戦いは終了した。
俺はこのアカギという男から学んだことを忘れないように……しっかりと胸に刻みたいと思った。
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なんだこのあたたかいものは?
俺は意識がもうろうのなかでこの場にはありえないものを感じた。それはこのあたたかさだ。
全ての神経を弛緩させ、わずかな水の流れの中にゆったりと身を任せる。
抵抗する力も残っていなく、俺はそのあたたかいものに体を任せた。
「……! なんだこれは?」
「どういうことだ? 一体何が起こっている?」
しかし、そのあたたかいものは俺の気のせいではなかった。その正体は光? このきれいな緑の光が俺を包み込んでいるのか?
その光は優しく俺を包んでいく。こんなの俺の知識のなかではないものだったため、何が起こっているのか俺でも分からなかった。
目の前のアカギも俺を包みこんでいる光に動揺しているようだ。あまりの眩しさにアカギはその場で動けないでいた。この光が何なのか、どこからあらわれているのかは分からない。
だが、これはチャンスだ。さきほどのどんよりとした感覚が嘘のように俺の体は軽かった。
そして、絶望による恐怖もなく、体中が綿のように軽くとても心地のよい状態だった。
そうか……この光はエリザか。
俺は初めてエリザに会ったときから感じていたことがあった。それはエリザから感じたあたたかさだった。抽象的なものだが、俺はこのあたたかさに惹かれていたようだ。
エリザといると俺までも心があたたかくなる。そんなやつだった。
きっとこの状況にエリザだって俺の力になりたいと思っていただろう。
そして、あのバブルの中でこんな俺のことを助けようと必死で祈っている。
その祈りがこの光を出現させたのか。こんなの通常のゲームじゃありえない。そして、俺も初めて体験することだった。
エリザ、今の俺の気持ちは一つだ。聞こえていたら嬉しいけどこの場で言っておく。
ありがとう……と。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「な、なんだと! HPが回復……いや、『死亡』の状態から復活しているだと?」
俺のステータス画面の表示が赤から青色に変わった。これは死の状態から復活したということを意味していた。通常は蘇生アイテムや蘇生魔法を使わなければいけない。ただ、エリザの祈りが俺を復活させて、絶望的な状況から一転させたのである。
感じる……まるで全力疾走しているときみたいに胸が熱くなり、さきほどよりも体全体に力を感じた。
そして、HPが全快しているときには完全に俺は意識を取り戻し、さきほどよりも自信に満ち溢れる目でアカギを見つめていた。
ここまでこれたのも、苦しみながらも他人である俺のことを思ってくれたエリザのおかげだ。
常に変わることなく勇気を与えてくれた。エリザには俺はどれだけ感謝しなければいいか分からない。
だから、今度は言葉じゃなくて行動で示す!
それが今の俺がなすべきことだ!
「強力な回復魔法を隠し持っていたのか? いや、こんなこと……は? まさか! あの小娘か」
「気付いたのか?」
「俺としたことが完全にうかつだったな」
「俺たちの絆の力をなめないほうがいい……そして、あんたは生まれ変わった俺に負けることとなる」
「何を言うか! そんなこと言うのは俺のHPを0にしてから言え!」
再び俺とアカギのデュエルが開始された。
さきほどよりも剣と剣がぶつかりあう速度も速まり激しさも増した。
レベルもステータスも装備も変わっていない。新しく取得した魔法もない。なのに、さっきよりもアカギの攻撃を見極められる。
さらに、あの一撃が重かったアカギの大剣による攻撃も簡単に受け止められた。
「な、何が起こっている?」
「残念だな……お前の攻撃はもう俺には通用しない」
「まさかそれもこの光の影響と言うのか? ぐ……仕方がない」
すると、アカギはさきほどと同じように俺と距離をとった。
これは、そうかあれを再び使うのか。
一度は俺を負かせた魔法である<神水>(アポカリプス)名前の通りこの街における最強の魔法。
あれを二回も使えるということはやはりあいつはトッププレイヤーの魔術師。それは認めざる得ない。
ただ、今の俺はさっきの俺とは一味違う。祈りの力を授かった。
今ならあの魔法も受け止められる、いや相殺できる自信がある。
「ここまで俺を楽しませたやつはお前が初めてだ……本当に惜しい男だ」
「あんたこそ反則級の強さだぜ……あんたがもし正義のためにその力を使ってるんだったらいい戦友になれたんだけどな」
「お互い勿体無いということだ……さぁ! 遊びはこの辺で終わりとしよう! <神水>(アポカリプス)!」
アカギが迫力のある声でこう唱えると俺の周りに無数の槍があらわれた。先ほどと同じだ。これらはかわしていては間に合わない。槍が俺に追いつくまでに相殺……弾き飛ばすほどの速さと威力のある技が必要だ。
俺は持っているカーナベルを握り締めた。
そして、俺も切り札の武器スキルであるあれを唱えた。
「<海の嵐>(ウォーターサイクロン)」
「やはり、そうきたか! だがその程度の魔法では俺の神水によって作られた槍の速さには追いつけないし、威力も足りないと思うぞ?」
確かにそうだ。こいつの作り出した槍に対抗するためには、もっと強い魔法が必要だ。だが、さっきと同じものと思ってもらっては困る。
これが、生まれ変わった俺のウォーターサイクロンだ!
俺の唱えたウォーターサイクロンは激しく渦を巻いていた。渦潮といった方がよいのだろうか、地上と違い水中ではこの魔法は威力を発揮していた。
そして、驚くことにアカギの唱えた魔法によって作り出された無数の槍は俺に当たることなく、全て弾き飛ばしてしまった。
「はぁ……? 俺の魔法がそんなに簡単に破られただと?」
「海の嵐の前では最強魔法によって作られた槍も無意味だったようだな」
「ばかな……こんなことありえない」
「形勢逆転かな? 今度はお前が追い詰められたな」
とは言っても残りの酸素ゲージも少なくなってきた。これ以上の長期戦はまずい。
そう言えば最初は疲れを感じなかったが、精神的にも肉体的にも疲れを感じてきた。
きっとここまでの戦いによるアカギの行為と慣れない水中での戦闘による影響だろう。
そして、俺は剣を構えるとあることに気付いた。ステータス画面が黄色く光っており何ごとかと思ってみて見た。すると、そこには<新スキルを取得しました>と表示されていた。
それを見た瞬間に俺は勝ちを確信した。
これは、俺にとっての朗報。そして、あいつにとっての悲報。
この新しく取得したスキルで決めてやる! あいつのギルドも悪事もこれで終わりだ。
俺は一気にその場から加速してアカギに突っ込んで行った。
正面から何も小細工はなく、俺はおびえることもせずに突っ込んで行った。
「ばかな……あんな真正面から行くなんて」
「シロウ……お願い!」
「何を考えている……いやこれはむちゃくちゃな行動ではない! 勝ちという確信があるからこのような……」
「終わりだ! これで今までのお返しをするぜ……<青龍の雷>(ドラゴンサンダー)!」
新スキルドラゴンサンダー。強力な雷による攻撃魔法であり、自身の装備武器にも雷属性が投与されるというものだった。そして、それは空を上る龍の雷のようだった。
唱えられた瞬間に雷はアカギに瞬時に向かっていき、それについていくように俺も雷属性が投与されたこのカーナベルで何回も斬りつけた。
雷による影響なのか? アカギは動きを止めて何も抵抗することなくただ俺の攻撃を受け続けた。
「これでラストォォォォ!」
「ぐ! ぐぉぉぉぉぉぉ!」
最後の一撃。これによってアカギのHPは0となった。
ついに俺は見事な大逆転勝利であの赤い雨のリーダーアカギに勝った。
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不安と恐怖と絶望で首まで心臓が飛び上がったように息苦しい。
俺の体に鉛が含まれているかのように重く苦痛なものだった。
そうか、俺は……あいつに負けたのか?
あの強烈な攻撃をまともに受けてしまったからだ。まさか、神水まで扱えるやつとは思わなかった。
実力が、実力が違い過ぎた。
「どうだ? 敗北の味は?」
「ぐ……なんで俺はすぐに消えない? HPが0になった瞬間に敗北は決定してるだろ?」
「これはあくまでデュエル、そして俺が主催したデュエルであるためステータス画面の『転移』というコマンドを押すまでデュエルは終わらない」
「相変わらずいじわるだな……苦しむ俺の姿をそんなに見たいか?」
「いやいや、敗北をしたとはいえお前のような人材を失うのは痛い……それで、こんな条件があるんだがどうだ?」
アカギは俺を見ながらばかにしたように鼻で笑いながらこんなことを言ってきた。
明らかに足元を見られているがこんな状況では仕方がない。俺は、仕方なくそのアカギの条件を聞くことにした。
「この<復活の草>(エリクサー)でお前をHP0の状態から救ってやる」
「エリクサーだと……それは超レアアイテムなのになんで持っている?」
「まあ、それは言えないがな……それよりもどうする? もし、エリクサーを使って欲しかったら、今すぐあいつらをお前の手で殺せ」
「は? お前なに言ってんだ?」
俺は自分でも声が怒りに震えるのを抑えきれなかった。なめてる、なめてやがる。
こいつは優しくもないし、俺と同じ人間と思いたくない。残酷、残虐的で卑怯者だ。俺はこの二人を助けるためにこいつとの戦いに挑んだのに、これでは目的がバラバラになってしまう。
俺は自分が助かりたいんじゃない。二人を助けたかったんだ。
あのときだって俺は川で溺れている少女をまっさきに助けに行った。自分でもなんでか分からなかったけど、俺のなかで助けなきゃいけないと思ったから体が動いてしまったのだと思う。
正義の味方と言われればそうかもしれないが、誰も助けなかったから俺が助けただけだ。
あのとき俺が動かなくても誰かが動いてくれたのかもしれない。
そうなればその人が正義の味方だ。俺よりいい結果になったかもしれない。
「そのままの意味だが?」
「そ、そんなの……ひどいよ!」
「……相変わらずひどいやつだ、この外道者が!」
「部外者は黙っててもらおうか! さぁ……お前はどうする?」
このまま条件をのまなかったら俺も含めて全員死んでしまう。ただ、こいつの言う通りにしてしまったら俺は助かっても……エリザやシェリーはどうなってしまうんだ。
こんなの決められるわけないだろ。
心理的な重圧にじっと耐えているような息苦しい表情。それが今の自分の表情だと俺は感じた。
どっちを選んでも待っているのは絶望。駄目だ……こんなの決められるわけがない。
考えれば考えるほど、俺はどんどんと深みにはまってしまいアカギの選択に答えることができなかった。
今まで俺はこんな選択などしたことがなかった。
だから、こんなに速く決められるはずがなかった。せめて時間があれば……いや、それでもこれは簡単に決められる問題ではない。
「どうした? 決められないのか?」
「こんなの決められるはずがないだろ」
「せっかくお前にチャンスをあげたの情けない……じゃあ迷いながら死んでもらおうか」
アカギは哀れっぽい表情で俺を見ながらステータス画面を見つめていた。
きっと『転移』のコマンドを押すのだろうか? 俺は終わりを確信してその場で目を閉じてしまった。
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「どうすればいいの? 私は?」
シロウの力になりたい。その気持ちで私はここにいる。なのに……こんな罠にはまってしまってシロウに迷惑をかけてしまった。こんなのシロウの足手まといになっているだけじゃない。
この世界に来る前からもそうだった。私はなんとか両親に役立ちたいと思っていろいろとがんばっていた。
殴られて、どんなにひどいことをされても私は笑顔でこう言った。
大丈夫とごめんねと。そんな甘い気持ちが今の状況を引き起こしてしまった。
私のせいでシロウを困らせてしまった。
ごめん、本当にごめんね。
胸に悲しみが満ち満ちる。どうすることもできない悲しみ。
自分の力のなさに、シロウの役に立てなかったこと。そして、この世界でも自分は役立たずということ。
さまざまな事実が私の胸をしめつけるように苦しめていた。
悲しさが心の底から湧き出る。同時に自分の両目から涙を感じた。
また、私は泣いてしまった。どうして? どうして泣いてしまうの? 死んでしまうから……ううん、これはシロウが死んでしまうから。
せっかくできた大切な人、シロウは私にとって家族みたいな人だったのに。
そんな大切な家族が失われてしまう。そんなのもう嫌だよ……。
孤独感が私を襲った。もうどうすることもできなかった。
こんな絶望の中で私は何もすることができないのか?
そんなことを思っているときだった。
「……諦めるな! エリザだったか?」
「その声は……シェリーさん?」
声をかけてきてくれたのはシェリーさんだった。比較的近い距離だったため、話すことは容易だった。
ただ、私はシェリーさんとは話すことがなかったため、あんまり話さなかったがここでシェリーさんが私にこんなことを言ってきた。
諦めるな……と。一体何を意味しているのだろうか?
「こんなときにお前がしっかりしないとどうする? 主人がピンチのときにも諦めず全力でサポートする……それが仲間じゃないのか?」
「そ、そんなこと言われましても……今の私は何もできませんし」
「戦う前、私は正直あの人がアカギに勝つことなど不可能だと感じていた」
「え?」
意外な発言がシェリーさんの口から聞いてしまった。私はびっくりして目が丸くなり、驚きのあまり言葉がしばらくでてこなかった。
そんななかでもシェリーさんは私に言葉を続けた。
「赤い雨のもと団員として私は迷っていたかもしれない、本当はまだ……」
「やめてください!」
「……どうした、急に声を張り上げて」
そこでしばらく沈黙した。そして今までに語ったものごとが私の頭が落ち着くのを待った。それから再び話を続けた。
伝えたいことはただ一つ。
「何を言ってもシェリーさんは私たちの仲間です! それはどんなことが分かっても覆りません」
「……そうか、私が悪かった」
「でも、ありがとうございます……シェリーさんのおかげで勇気をもらえました」
シェリーさんが言った通り諦めちゃ駄目だ。何があっても私はシロウに元気を与えなくちゃいけない。
それが私の役目であり、今の私にできること。
そう思って私は心から祈った。お日さまに照らされたみたいに気持ちがあったかくなる。私はこの寒い水の中でもこのような気持ちでシロウに向けて祈り続けた。
お願い……シロウに力を与えてください。私たちのためにがんばっているシロウのためになんとかお願いします。私は神様に祈るように言葉を続けた。
シロウ頑張って。そして必ず勝ってね!
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俺とアカギの一対一のバトルがついに始まった。俺にとってこの世界に来てからの水中での戦いは初めてだった。だから、まずは相手の動きを見ながらこの水中戦に慣れるしかない。
「さてと……俺の攻撃についていけるかな?」
「ついていけるかじゃない……俺はお前の攻撃についていかなければ死ぬからな!」
「ほぉ? それは確かにそうだな!」
俺のレベルが31、そしてアカギのレベルが40といったところか。ステータスを見る限り俺より少し高いと言ったところか? いやにこいつのレベルが低いのが気になるが……これぐらいのレベルの差ならいける。
後は装備品だ。見た感じは大剣と言ったところか……武器の名前はこの辺で出現するモンスターの武器。
大した武器ではないし、武器スキルもない武器だ。防具もいたって平均的なもの。
こんなやつがこの赤い雨のリーダーなのか?
いやいや、ステータスの強さだけがこの世界の全てではない。
顔と顔があうこの状況で、相手の顔の見えなかったゲームとは違う。経験や運動能力なども考慮する必要がある。そして、左上に表示されている酸素ゲージにも気をつけなければ……。
そして、そんなことを考えているうちにアカギが勢いよくこちらに迫ってきた。大きな剣を俺に向かって振りかざしてきた。この一撃をくらってはかなりのダメージを受けてしまう。それほど、アカギの攻撃は速くてその証拠に、俺は自分の顔に風を感じた。
水中で動きにくい中で俺はアカギの攻撃を防ぐために、俺の武器であるカーナベルで受け止めた。
水の中でも金属音が響き渡り、剣と剣が水の中で火花を散らして交錯する。
俺とアカギの攻撃はそれほど激しいものだった。
「ほぉ……やるな」
「あんたこそな……なんでそんな平凡な武器でこんな攻撃ができる」
「レベルの差があるなかで俺の攻撃を受け止めたお前も見事だな……だが!」
鍔迫り合いの中でアカギは口元で何かをつぶやいた。俺はやばいと心の中で感じて距離をとろうとしたが、アカギのその行動が一歩速かった。
つぶやいた内容は魔法名である。そして、俺の目の前に水のドラゴンが現れた。
「<破滅の水龍(エリュシオン)>」
「エリュシオンだと! ま、まずい!」
「言い忘れていたが俺は本来は剣士ではない……魔法を得意としている<魔術師>だよ」
魔法であるエリュシオンはかなりの上級の魔法である。これを使えるということはあいつの言っていることは間違ってはいない。かなりの上位の魔術師であるということだ。
俺はアカギの唱えた魔法であるエリュシオンを、まともにくらってしまい水中でもがき苦しみながら、この部屋の壁に激突した。
いって……くそ! 痛みはないが、俺のHPが……。
ふと、左上を見ると俺のHPは半分以上減ってしまっていた。すかさず、常備していた回復薬を使って回復をしたが、これ以上アイテムを使うわけにはいかない。数に限りがあるため、なるべく消費はしたくなかった。
「どうだ? 俺の魔法は?」
「水のあるところだとしてもこの威力は反則だろ……でも、なんであんたはそんな強力な魔法を使えるのに剣なんて持っているんだ?」
「その方が面白いだろ? 魔法も使えて剣も扱える魔術師なんてかっこいいだろ?」
「ふざけてるな」
「ふん……変わっていると言って欲しいな!」
まるで鮫のような速さでアカギは再び俺に迫ってきた。水中戦闘にかなり慣れているのだろうか? 人間とは思えないほど水中での動き方がうまかった。
俺もすぐに体勢を整え、カーナベルを向かってくるアカギを狙うように構えた。
「ふん!」
「うぉぉ!」
十文字に交錯する剣と剣。
どちらも一歩も引かず、とても熱いバトルが繰り広げられていた。
俺にはお前と違ってかけているものがある。エリザ、シェリー……そして自分の命。
正直のところ今にでも逃げ出したい気持ちはある。だがな……大好きだったゲームの世界に来た以上は逃げるわけにはいかねえよな!
それは本当に一瞬の隙だった。最初とは違い攻める俺に対して、アカギは防戦一方だった。
さっきの魔法はやはりかなりのMPを消費してしまったようで、もう一度魔法を唱えるということはしてこなかった。俺はここがチャンスだと思い、一気にアカギを攻めた。
やはり、剣による攻撃速度は俺の方が上。水中ということあってあまり本来の実力はだせていないけど、これなら十分にいけるな。
そして、その俺の言ったアカギの隙が生まれた。
守り疲れたのかアカギは本当に一瞬だけ、体勢を崩してしまった。俺はそんなアカギの隙を見逃さずチャンスだと思い、あの武器スキルを発動した。
「<海の嵐>(ウォーターサイクロン)!」
「あ、あれは……シロウの必殺技……」
「……ということはあのアカギはおされているのか?」
「なるほど、お前もやはり持っていたか……」
「残念だがこれで終わらせる! これ以上の戦いは俺も望んじゃいない!」
海の嵐はこの水中を支配した。まるで全てを吹き飛ばしてしまうような嵐だった。飲み込まれるようにアカギはその嵐の中に消えていった。さきほどのエリュシオンもかなりの威力だったが、俺の唱えた海の嵐もそれに負けないぐらいのものだった。
「はぁはぁ……」
疲れた。今日は二回も発動したからな……MPの消費も半端ないしこれっきりにしとかなきゃな。
それにしても強い相手だった。さすがは赤い雨のリーダーと言ったところか?
俺は落ち着きながらその場で呼吸していたそのときだった。
「おいおい? そんなものか?」
「……やっぱりまだまだ続くか」
「お前のその攻撃見事だったが、俺には全然きいていないということを教えてやろうか?」
「なに!? あ、ああ……うそだろ」
「残念だがこれが現実……そして、次でお前は終わりだ」
ばかな。ばかな、ばかな……こんなことがありえるか。これが俺の最高威力だったんだぞ? それなのに……あいつのHPは半分どころか、全然減っていない。きっと100ダメージも受けていないということだ。
いったいどうなっているんだ……?
アカギのことが何も分からず俺はその場で、焦りながら考え込んでいるとアカギはさきほどによる強力な魔法を俺に向けて唱えてきた。
「死ね<神水>(アポカリプス)」
「う、うそだろ……それは存在しないと言われる魔法……」
俺はそれを言いかけた途端、四方八方からあらわれた水の槍に突き刺さってしまった。
カーナベルによる自動回復も間に合うはずもなく、俺のHPは0となった。
今日もいつも通りログインしたらなんと……。
通算100日目ということです。聖昌石を20個ももらってしまいました。
それにしてももう100日もプレイしているんですか。はやいものです。
そしてこの流れに乗ってガチャを引きたいと思います。
いや、さすがにもうあいつらはでないはずですw。
運命のガチャはどんどんと進んでいきました。
ダビデや牛若丸(宝具レベル5)といったつわものがでてきてしまいます。
今回も駄目かと思ったんですが……。
なんとカードの色が金に光りました。な、何がでるかと思ってみてみると。
ありがとうございます。いやー見たときはビックリしましたよ運営さんw。
ずっと前から欲しかったランスロットが手に入りました。
本当に興奮気味ですw。星4ですがかなり強い部類なのでこれは使えますね。
見た目もかっこいいですしね。
すでに29レベルまで育ててあるのでこれからがんばって育てたいと思います。
そして、育成も含めての種火集めにいったのですが。
何かいろいろと仕様が変わってましたね。
まあ、いつも通り他の作業をしながらでもいけるだろう。
そんな軽い気持ちで行ったのですが……見事にやられましたw。
それでもなんとかクリアしましたが、これは難易度上がりすぎてませんか?
噂によると28万とか相手のHPがあるようですね……それはひどいです。
なんとかバランスを考えてもらって調整してもらいたいですね。
そして、関係ないですがオケアノスも攻略しないと……w。
あんまり言ってもしょうがないので今回はこの辺で。
それでは! みなさんも難しくなった種火や素材集め頑張ってくださいね。