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焼き芋の気ままにゲーム攻略&創作

水の中のVRMMO -water online- 第二章 五話 シェリー

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水の中のVRMMO -water online- 第二章 五話 シェリー

 私の家族は厳しかった。
 父は有名なゲーム会社で働いておりこの『water online』の作成者でもあった。発売当社から爆発的な人気になり、ゲームを多分やらない人でも名前だけなら聞いたことがある。それぐらいの知名度となっていた。母も働いており、両親が家にいないことなど当たり前だと私は思っていた。
 さらに、一人っ子だった私はますます孤独の時間が増えていった。

 そのなかで両親が私に求めることはとてもレベルが高い。
 できなければ……冷たい目で見られ続け黙ってため息をつかれるだけだった。
 テストで百点を取っても、習っていた剣道でどれだけいい成績を収めようと、両親が私を見る目は『できて当たり前』と言った感じだった。

 何度か私は思った。自分は誰のために生きているのだろうか?

 そして、ある日私の家に一人の謎の男が訪ねてきた。風貌はとても整っており、美形と言うべきだろうか? とにかくその銀色の髪がとても印象的だった。その男の名前は……。

「どうも……『黒野創』です! 私はゲーム作りの運営……まあ、システム的な部分が得意と言っておきましょう」
「ほほぉ! どこが見た顔だと思ったら、黒野創……たった一人で倒産寸前のゲーム会社を立て直したというやつか?」
「ふふ……知っているのですか? 私のことを?」

「ゲーム業界なら君は有名だよ! それで私に何のようだ?」

 私はそんな会話をたまたま聞いていた。だけど、あの黒野という人からはとてつもない怖さを感じた。
 背中から寒気が襲い、今にでも全身が凍えてしまいそうだった。
 そして、私と黒野という人の目と目が偶然にも合ってしまったときだった。
 ど、どうしよう……。当時、まだ幼かった私はその独特な雰囲気に圧倒されてしまいその場で動けなかった。

「あそこは娘さんですか?」
「ん? ああ……それがどうしたんです?」
 
「……いえいえ可愛らしい娘さんですね! 本当に……」

 どうやらあの人は私のことが気になったらしい。何を考えているのか? 私には黒野という男の人が何を目的として私たちのところにきたか。まだそれは分からなかった。

 そして、話はどんどんと進んでいき、あの銀髪の男の人は私たちの家に入り込んできた。

「……そう言えば、私にも預かっている娘がいましてね……名前は『姫崎ソレイユ』って言うんですけどね……」
「姫崎!? まさか、あの姫崎財閥の娘か?」
「あんまり詳しくは言えませんがね」

「なぜ、君がそんなところの娘と……まあいい、その時点で君はいろいろと優秀だな」
「ありがとうございます……その言葉非常に嬉しいです」

 姫崎財閥。私は聞いたことがあった。世界的に有名な財閥でよくテレビの提供などで見かける。それほど、一般的の人にも知れ渡っており、大きな財閥であった。

「よければここに連れてきましょうか? そちらの娘さんと友達になれればこちらとしても嬉しい限りです」
「ほぉ……まあ、悪影響を与えることはないであろう」
「それは保証します」
「なら、つれてこい! 別の部屋で二人で遊んでいてもらおう」

 ええ! そんなに勝手に決められちゃ困るよ! 私は普段学校でもあまり話さなかった。いや、正確には話せなかった。お父さんには余計な友達を作るなと言われており、それはお母さんにも言われていた。
 休み時間も本ばかり読んでいる私にとって、友達というのがどんなものか分からなかった。
 そして、気付けば私は別の部屋に誘導され、姫崎財閥の娘さんを待っていた。
 ふと、胸に手を当てるととても心臓がバクバクとしており、鼓動がいつもよりも速くなっていることに気がついた。相手はお嬢様。変なことは絶対に言えないし、接し方を間違えてはいけない。
 私は、この広い部屋の中で落ち着かず体全体が揺れていた。

 どうしよう、どうしよう、どうしよう。
 そんなことを思っているときだった。

「あ……」

 思わず、私は声が出てしまった。静かに開けられた障子から入ってきた子はとても可愛らしかった。まるで、お人形みたいに。透き通るような白い肌。髪の色は金髪で、パッチリとした瞳に、目の色はとても澄んだ色の青色だった。私より髪の長さは短かったが、とても髪型が似合っており、服装も白のワンピースととても着こなしもよく私とは比べ物にならなかった。
 しかも、見た目からしてハーフだろう。に、日本語でいいよね?

「始めまして! 黒野から聞いていると思うけど私の名前は『姫崎ソレイユ』です! 宜しくね!」
「ああ……あ、あの……」
「あなたの名前を教えてくれるかしら?」
「わ、わたしの名前は……遠坂紗理(とおさかさり)……」
「へぇ……可愛らしい名前ね」
「そ、そう……あ、ありがとう」

 うう、駄目だ。目の前にはあの姫崎財閥の可愛らしい子。私とは釣り合わない。向こうだって、本当はもうちょっと明るい子を期待していたはず。なのに、現実はこんなに暗くてあまり話せない女の子。
 やっぱり私には……。

「でも、サリちゃんって少し呼びにくいな……そうだ! 私のことはソレイユって呼んでくれればいいから……私と同じ感じで呼んでいいかしら?」
「え? べ、別にいいけど」
「それじゃ……どうしようかな?」

 ソレイユちゃんは私のあだ名? 一生懸命考えてくれていた。そして、何か閃いたのか手をポンと叩いて私に微笑みながらこう伝えた。

「じゃあさ! シェリー……なんてどうかな? なんかもっと可愛らしいと思うけどな」
「シェリー……」
「……駄目だったかな?」

 シェリー。うん、いいと思う。せっかくこんな私のために考えてくれたんだ。
 だったら……ここは素直に。

「全然……いいよ! 本当にありがとう」
「あははは、やっと笑顔になったね! やっぱりシェリーちゃんは笑ったほうが可愛いよ!」
「わ、私が? そんな……ソレイユちゃんの方が可愛いよ」
「ううん、シェリーちゃんは何かこう日本の女性の美しさを兼ね備えていると思うよ!」

 こんなにも褒められたのは生まれて初めてかもしれない。
 私はそんなソレイユちゃんの言葉にとても感激していた。

「私たちはもう友達……ってことでいいよね?」
「本当に私と友達になってくれるの?」
「うん! 私はこうやってシェリーちゃんと出会えて本当に嬉しいよ! これから宜しくね!」

 ソレイユちゃんはこちらに手を差し出してきた。
 本当に、本当にありがとう。私はそう心の中で強く思いながら、差し出された手に触れてソレイユちゃんとガッチリと握手をした。

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 姫崎財閥になぜ黒野という男の人がきた理由。それは、『water online』の作成・運営に携わりたいという内容だった。当然に、お父さんはその話に賛成し、ゲーム会社も全面的に姫崎財閥に情報の提供などに力をいれた。
 そして、黒野創という人物はとても優秀だった。たった、数ヶ月で運営管理のトップ『ゲームマスター』にまでにのぼりつめ、ますます『water online』の人気に火をつけることとなった。
 父さんも黒野さんを信頼しきっており、片腕的な存在となっていた。

 そんななかで私がこの『water online』の世界に入ってしまうこととなった事件が起こってしまった。
 それは、ある雨の日のことだった。
 私とソレイユちゃんがいつもの部屋で遊んでいるときだった。

「あ……ごめんね、ちょっとトイレにいって来るね」
「うん! 分かった! 待ってるね」

 私はごめんと謝りながら、トイレに向かう途中のことだった。
 あれ? あれは黒野さんとお父さん? 今日は黒野さん来ないって行ってたのに……。
 それに何か二人ともいつもよりも真剣な表情。一体何を話しているんだろう?
 私は二人の話の内容が気になり、気付かれないように話を聞くことにした。

「それでは……今日がついに実行日ですね?」
「ああ! 君が作った仮想を超えた『water online』……それを見せてくれ!」
「では……本日の夜に……『遠坂紗理』を実験要員に使用で宜しいですね?」

 え? じ、実験!? ど、どういうこと。私には二人が何を言っているのか分からなかった。
 何を思っているの、父さん! 私は……どうなってしまうの?

「しかし、本当に宜しいですか? 大切な娘さんなのに……」
「気にするな! もともとはあんなやつ……ただのよその子供だからな」
「……と言いますと?」

「あいつは俺たちの間から生まれた子供じゃない! ただの……養子だよ」

 そ、そんな! 私は衝撃的な事実に頭が混乱していた。
 話を聞けば聞くほど私は絶望のふちに追いこまれていく。
 私はこの遠坂の子供ではない。その事実が私の胸を誰かが掴むような感覚。それほど、精神的にに私を苦しめていた。
 お父さんが私を引き取った理由は、お母さんが子供が産めない体のため。
 世間的な部分や、今後は何かに役立ってくれればいいというものだけの考えだったらしい。
 愛などはないような発言。私はとんでもないことを聞いてしまったと思いながら、ソレイユちゃんの待っている部屋へと戻って行った。

「どうしたの? なんだか表情がさっきよりもどんよりとしているよ?」
「ううん! 何でもないよ! ちょっとお腹が痛かっただけ」
「大丈夫なの?」
「うん……」

 この様子だとソレイユちゃんは何も知らないようだ。
 私は聞いたことを誰かに話したい気持ちがとてもふくらんでいた。
 あらいざらい……誰かに話せれたらどれだけ楽になるだろう。
 だけど……このことでソレイユちゃんに無駄な心配をかけるわけにはいかない。
 私は必死に恐怖や悲しみを堪えながらソレイユちゃんに笑顔で接し続けた。

 そして、ついに夜を迎えた。
 ソレイユちゃんはすでに帰っており、私は自分の部屋のなかであることを考えていた。
 逃げなければ……そしてこのことを誰かに伝えないと。誰か……頼れる人に。
 そんなことを思いながら、私は部屋の扉を静かに開け、脱出できそうな部屋の窓を探した。
 絶対に私は実験要員になんかになりたくない!
 あの時言っていた内容については分からないが、必ず私にとって過酷な運命が待っている。

 だから逃げないと……逃げない……。

「どこにいくのかな? 外は雨が降ってるよ?」
「……! あ、あなたは!」
「さあ……部屋に戻ろう? こんなところにいては寒いよ?」

 私にそう言ったのは、黒野創という男だった。
 この人だ。この人のせいで……私は!

「どうして……私はあなたの言っていた実験要員にならないと駄目なんですか?」
「……何を言っているのかな?」
「water online……現在、爆発的な人気を誇っているオンラインゲームそして、あなたはそんな仮想の世界を現実に作り出すことに成功した」

 だから、私はその世界のテストプレイヤーとして選ばれた。
 しかし、まだ開発途中のその世界はいろいろと問題があった。
 それは……人が死という状態にならないとその世界に転送が不可能ということだった。
 私は誰もいないときに探し出して見た資料を見ていたから分かった。
 そして、そのことを目の前の首謀者に伝えるとその場で小さな声で笑い出した。

「……そこまで分かっているのか? なら、話が早い! 少し予定ははやいが死ね!」
「やっぱり! 私を殺すのか!」
「どうせ貴様は誰にも必要とされていない……ならば私の計画のために犠牲になってもらおうか」

 すると、黒野は謎の銃を取り出しそれを私に向けて発砲してきた。幸い、剣道をやっていたためか、抜群の反射神経をこの場で披露し、本当にギリギリのところで黒野が放った銃弾をかわした。
 銃弾というよりは、泡。それも普通の銃弾よりもかなり速さは遅く、目に見えるぐらいだった。
 でも、絶対にあの泡に当たったら、黒野の思い通りのことになる。
 そうならないようにかわしながらいけば……どうにか……。

「そいつを抑えろ……ソレイユ!」
「……! そ、そんな!」

 私は後ろからがっしりと体を何者かにおさえつけられていた。
 力としてはそんなにだったが、私はその自分をおさえつけてる人。
 それがあのソレイユちゃんだと言うことが信じられなかった。 
 どうして? どうしてなの? ソレイユちゃんまで私を裏切るの?
 私はそんなことを思いながら、ソレイユちゃんにどうにか私を助けて欲しいと力強く思った。
 ただ、そんな思いは届くはずがなくソレイユちゃんは耳元で私にこう言った。

「……ごめんね」
「ふふふ! いいぞ! それでは、ようこそ……『water online』の世界に!」

 私はもう抵抗することはなく、黒野が持っている銃から放たれた泡に当たった。
 そして、その泡は私を瞬時に包み込み、私はその泡のなかで息ができずに死んだ。

 これが、私の過去。そして、あの雷雨の雨の日の悲劇であった。

焼き芋の創作サイト
http://yamasaki.yu-nagi.com/

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