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焼き芋の気ままにゲーム攻略&創作

水の中のVRMMo -water online-  十四話 祝勝

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水の中のVRMMo -water online-  十四話 祝勝

 アカギを倒したその後、俺たちは始まりの宮殿から出るとたくさんの人が迎えてくれていた。
 どうやらみんな赤い雨を倒してくれたくれたことに感謝しているようだった。俺たちはこのアポカリプスの英雄として称えられた。

「よくやってくれたな……まったくお前は大したやつだよ!」
「いてて……そんなに頭を撫でないでくださいよ……恥ずかしいですよ」
「ノイワールさんたちも大丈夫だったんですか?」
「少しの仲間はやられたけどな……まあ、転移した先から戻ってくるまでの辛抱だ……それよりも今日は『赤い雨解散記念』パーティーを開くぞ!」
「うわ! やった! 何かご馳走を作るんですか?」
「任せろ! 俺が腕をふるって作ってやるからな! 期待していろよ」

 この人の集まりの中で待っていたノイワールさんは俺のことを、我が子のように褒めてくれた。手荒い祝福だったが、俺はこんなにも褒められたのはいつ以来だろう?
 思えば成長にするにつれて、親に褒められることなどなかった。淡々とした毎日を送っていた。だけど……この瞬間は久しぶりに生きているという実感が湧いた気がする。

 濃密な時間というべきか? とにかく俺にとってこの瞬間は……幸せだ。

 俺はこの幸せな時間を実感しながら、たくさんの人が迎えてくれているこの道を歩いた。
 ここは仮想の世界かもしれない。
 だけど、現実よりずっと楽しく、みんなが幸せを共有できる素晴らしい場所だと感じる俺だった。

 だけど、あのアカギの家族の話で俺は思い出した。俺にも家族がいるということに。家族は俺が死んでしまい悲しんでいるかもしれない。いや、自分の子供が死んで悲しまない親などいない。

 もし……この世界を出られる方法が見つかったらなら、俺はその方法に従って元の世界に帰らなければいけない。

 俺を待ってくれている人のために。必ず……。

「どうしたの? シロウ! はやく帰ろうよ!」
「……あなたがこないと始まらない」
「来なよ! よ! 英雄さんよ!」

 でも、しばらくはこの世界にいることにしよう。
 俺はそんなことを思いながら、俺を待ってくれている三人の元へ走っていくのであった。

 -----------------------------------

「それじゃ! 『赤い雨解散記念』ということで乾杯!」
「乾杯!」
「ああ、乾杯!」
「……乾杯だな」

 俺たちはノイワールさんの店で予告通りにパーティーを開いていた。
 俺、エリザ、シェリー、ノイワールさんでイスに座っていた。
 とてもきれいなテーブルの上にはたくさんのご馳走が並んでいた。

「うわ……本当にすごいご馳走ですね」
「そりゃ! 腕をふるったんだからな! 当たり前だ!」
「まずはこの魚の料理を食べていいですか?」
「お! それに目をつけるとはエリザちゃんもやるな! それは魚のパイ包みと言って……」

 エリザとノイワールさんはとても仲良くやっているようでよかった。それにしても、俺もこの料理はとても美味しそうだと感じた。匂いがとてもいい。
 エリザの目が輝いているのがいい証拠だ。これは本当にご馳走だ。

 俺は口の中に唾液をためながら、気になった料理に手をつけようとした。
 だが、そのときだった。俺は忘れていたこの何も感情のない剣士がいることに。

「あ! お前もうそんなに食べたのかよ……」
「何かまずいか?」
「いや、俺もその肉料理が食べたかったのに! 少しは残しとけよ!」

 俺は食べようとしていた肉料理がシェリーにもうすでに半分以上食べられてしまったいたのだ。
 こいつには人を想う気持ちがないのか? いや、ただ単に無神経なだけかも。

「それはすまんな……ただ食事というのは戦いだ! いかに速く食うのかが秘訣だ」
「お前な……まあいいや、別のを食べることにするか」
 あのときのアカギの言っていたことを思い出し俺はこれ以上は強く言わないことにした。
 きっとこいつは過去に何かあったのだろう。捨てられた、それがこいつを変えてしまったのかもしれない。
 みんなそれぞれ問題や、不安を自分の心の中に気づかぬうちに抱えている。
 それは自分だけではどうしようもできないときがある。だから、仲間と協力し助け合う。

 それが一番の解決方法だと思う。

「どうした? そんなに私を見つめて?」
「いや……何でもないさ! 今日はいろいろあって疲れたと思ってな」
「……そうか、そう言えばあなたに渡しておきたいものがある」
「ん? 俺に?」
「そう……今日のお礼と言っては少し物足りないないのかもしれないが、今後あなたにとって役立つものだろう」

 すると、シェリーはステータス画面を開き、どうやらアイテムイベントリを開いているようだ。そして、しばらくすると俺のステータス画面が光りだした。なんとそこには短剣の一つである
『雷剣』(サラマンダー)が俺のアイテムイベントリにあったのだ。

 サラマンダーは雷属性のなかでもかなりの上位の武器。この武器を扱えるのはプレイヤーの中でも極少数だった。

「サラマンダーって……おい! こんなんもらってもいいのか?」
「私にこの武器は扱えない、それに今日の戦いを見てあなたは雷属性に適性をあると感じた」

 確かにあの新しく取得したスキルの属性は雷。それにあのとき俺は、まるで雷が体に馴染むような感覚だった。
 シェリーの言う通り、俺の得意属性は雷なのかもしれない。

 これからもっと強い強敵と戦うにあたって、武器は非常に重要。ただ、強いだけじゃ駄目だ。自分にあった武器を使わなければいつまでたっても強くはならない。

「分かった、お前のその贈り物……受け取っておくよ」
「そうか、あなたなら必ず使いこなせる」
「それはそうとお前は料理を食べすぎだ! いい加減にしろ!」

「あっちも盛り上がってるな!」
「そうだね!」
「よーし! 今日は徹夜だ! 盛り上がっていこうぜ!」

 この祝勝会は結局朝まで続いた。
 俺はヘトヘトになって、エリザやノイワールさんはテーブルに顔をつけて眠ってしまっていた。
 そして、シェリーも気付いたら壁に寄りかかり静かな寝息で眠っていた。

 俺も寝るか。睡眠は……重要だからな。俺は意識がもうろうのなかで、ひとみを閉じて眠りについた。

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