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水の中のVRMMO -water online- 第八話 赤い雨
1話から7話はこちらにあります
焼き芋の創作サイト
http://yamasaki.yu-nagi.com/
一階を攻略した後はすぐに二階も攻略することが俺たちはできた。
レベルの差や装備品やスキルの影響もあったが、俺たちは赤い雨のやつらをどんどんと倒しいくことに成功した。エリザは器用に敵の攻撃をかわしながらふところに潜り込んで、ダガーナイフで俊敏に相手を斬りつけていた。見事だな。俺はエリザの動きを感心しながら敵の攻撃をかわしていた。
「よそみをしてる暇があるのか?」
「ああ? お前こそ戦闘中に話しかけて大丈夫なのか?」
「私を誰だと思っている?」
「それもそうだな……ぐ!」
そんななかでシェリーは見事な剣さばきで相手の敵の攻撃を受け流していた。
さすがの剣さばきといったところか。思わず心を奪われそうな剣の扱いだった。正直のところ剣の扱い方だけなら、俺もこいつには敵わない。俺はどちらかというと力ずくでやってしまうこともあるからな。
そう考えると、こいつの腕はこの世界のなかでもトッププレイヤーの位置になるだろう。
「こいつらこんななかで話しやがって……」
「俺たち赤い雨をなめるな!」
「いや、もう終わりだ……」
すると、右手に持っているカーナベルが青く光りだした。そして、カーナベルの武器スキルである魔法を唱えるために俺はその場でこう言った。
こんなやつらに使うものではないけどな。だが、ここは一回テストプレイのつもりで使わせてもらうぜ。
くらえ……。
「<海の嵐>(ストームサイクロン)!」
その瞬間に剣先から風が吹き荒れた。そして、相手が驚くなかで俺は引いている剣を前に振った。そして、その反動で剣先で吹き荒れているその風は、狙った相手に向かっていき竜巻となった。当然、その竜巻に巻き込まれた相手はHPゲージが0となった。
「こんなの……」
「勝てるはずがない」
「残念だがお前らじゃ俺には勝てないよ」
「たった一撃でみんな倒しちゃったよ……やっぱりシロウはすごいよ」
「私の相手まで倒してしまうなんて……ひどい」
「いいだろう? せっかく倒してやったんだから」
相変わらずシェリーは俺がこんなすごい剣魔法を見せてやったのに表情を変えることもなかった。エリザは褒めてくれるんだけどな……。それにしても、ここまで何も周りは動いてきていない。赤い雨のギルドリーダーは一体何をやっているんだ?
通常のギルドリーダーは前線にでてきて、部下の命令や支援などを行うはずだ。それをしないということは……俺たちに絶対に勝てる勝算があるということか?
強い魔法や武器や防具、それともあまりのレベルの差が離れているということか?
「どうしたの? シロウ?」
「あ、悪い悪い! 少し考え事をしてた」
「次は三階だ……いよいよこのギルドのボスにも会えるだろう」
「ボスか……気をつけろ! 何をしてくるか分からないぞ」
いよいよ始まりの宮殿の最上部の三階の階段へとたどり着いた。この階段を昇ったらこの赤い雨のギルドリーダーと会えるという訳だ。俺たちは回復や装備品や連携の確認などを済ませた。
そして、その後はいよいよ赤い雨のギルドリーダーがいる階段をゆっくりと昇って行った。
この<water online>の世界に着てから初めての本当の戦い。俺は胸に自分の右手を置いて少し緊張している自分を落ち着かせようとした。
緊張するな。俺はこのゲームを死ぬほどやってきた。ゲームであっても数々の修羅場を経験してきた俺にとってはこんなところで緊張していては駄目だ。もっと、もっと強くならないと……。
「本当に大丈夫? シロウ?」
「エリザ? 何を言ってんだ? 俺なら大丈夫だ」
「でもなんか体が震えているよ……もしかして緊張しているの?」
「……正直に言うと少しだけどな、これからはじまるのはこの世界に俺が来たなかで、戦う相手で一番に強い相手だろう」
「だから、自分の実力が通用するか怖い……そんなことを感じているの?」
俺はエリザに自分の心が読み取られるかのようだった。エリザには驚かされた。人の気持ちが分かるといことは俺にとって怖いことだった。俺は今はエリザに自分の心が透けているかのようだった。
確かにそうだ。俺はこれからの戦いに自分の力が通じるか不安で仕方がない。もし、通用しなかったら……今までやってきたことはなんだったんだ?
「大丈夫だよ……シロウは強いから誰にも負けない! それは私が保証するよ」
「……エリザ」
「初めて会ったときから私はシロウなら大丈夫だって思えたんだ……それはね! シロウならいざというときにものすごく頼りになるから付いていけるからと思ったからだよ!」
エリザはこんな状況でもいつも見せてくれる笑顔を俺に見せてくれた。
そうか、俺はエリザにこんな風に思われていたのか。それにしても、いざというときか……はは、今度は普段もそういう風に思われるようにしないとな。
だけど、ありがとうエリザ。その言葉で俺も分かったよ。
自分の力は通用するかなんて考えては駄目だ。絶対に通用すると思わないとな。
「……そろそろのようだな」
「よし! もう覚悟をきめたから大丈夫だ!」
「シロウが立ち直ってくれてよかったよ……私もがんばらないとね!」
それぞれが覚悟をきめたようで、シェリーも俺もエリザもこれからの戦いに備えているようだった。
そして、ついに始まりの宮殿の三階へと着いた。
一階、二階とは違ってなんだか違う雰囲気がこの場を支配していた。周りには口の開いたライオンの置物や、天井はガラスとなっており外の光がとてもこちらに差し込んでいた。
「誰もいないようだな……」
「いや、魔法で隠れているかもしれない気をつけろ」
「うう……どうなっているの?」
俺も含めて三人が戸惑っている。しかし、その隙をついたのかは分からなかったが、突然上から謎のひもがあらわれ一瞬のうちにエリザに巻きついた。
「き、きゃー!」
「おい、エリザ!」
「待て! その剣で攻撃したらあの子まで傷つけてしまう」
「ぐ……」
大量のそのひもはエリザに絡みつくように縛り付けられ、エリザは上空につるされるようなかたちとなってしまった。悲鳴を上げているエリザだったが、俺はどうすることもできなかった。俺のカーナベルでは攻撃範囲が広すぎる。それを察してシェリーはその場から上空に飛び上がって、エリザに絡みついているひもを斬りおとそうとした。
だが、そのひもは思ったよりも頑丈でシェリーの攻撃でもひもを斬りおとすことができなかった。
「どうなっているんだ?」
「私も分からない……あの子に絡み付いているあのひもは一体……」
「それはこの私が説明しよう……」
その声に俺とシェリーは反応した。すると、後ろには赤いマントに身を包んだ謎の男が立っていた。見た感じは茶髪のさわやかな青年だったが、俺はこいつが誰なのかすぐ分かった。
「まさか、お前が……」
「さすがは察しがいい……そうだ! 私が赤い雨のリーダー『アカギ』だ」