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なんだこのあたたかいものは?
俺は意識がもうろうのなかでこの場にはありえないものを感じた。それはこのあたたかさだ。
全ての神経を弛緩させ、わずかな水の流れの中にゆったりと身を任せる。
抵抗する力も残っていなく、俺はそのあたたかいものに体を任せた。
「……! なんだこれは?」
「どういうことだ? 一体何が起こっている?」
しかし、そのあたたかいものは俺の気のせいではなかった。その正体は光? このきれいな緑の光が俺を包み込んでいるのか?
その光は優しく俺を包んでいく。こんなの俺の知識のなかではないものだったため、何が起こっているのか俺でも分からなかった。
目の前のアカギも俺を包みこんでいる光に動揺しているようだ。あまりの眩しさにアカギはその場で動けないでいた。この光が何なのか、どこからあらわれているのかは分からない。
だが、これはチャンスだ。さきほどのどんよりとした感覚が嘘のように俺の体は軽かった。
そして、絶望による恐怖もなく、体中が綿のように軽くとても心地のよい状態だった。
そうか……この光はエリザか。
俺は初めてエリザに会ったときから感じていたことがあった。それはエリザから感じたあたたかさだった。抽象的なものだが、俺はこのあたたかさに惹かれていたようだ。
エリザといると俺までも心があたたかくなる。そんなやつだった。
きっとこの状況にエリザだって俺の力になりたいと思っていただろう。
そして、あのバブルの中でこんな俺のことを助けようと必死で祈っている。
その祈りがこの光を出現させたのか。こんなの通常のゲームじゃありえない。そして、俺も初めて体験することだった。
エリザ、今の俺の気持ちは一つだ。聞こえていたら嬉しいけどこの場で言っておく。
ありがとう……と。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「な、なんだと! HPが回復……いや、『死亡』の状態から復活しているだと?」
俺のステータス画面の表示が赤から青色に変わった。これは死の状態から復活したということを意味していた。通常は蘇生アイテムや蘇生魔法を使わなければいけない。ただ、エリザの祈りが俺を復活させて、絶望的な状況から一転させたのである。
感じる……まるで全力疾走しているときみたいに胸が熱くなり、さきほどよりも体全体に力を感じた。
そして、HPが全快しているときには完全に俺は意識を取り戻し、さきほどよりも自信に満ち溢れる目でアカギを見つめていた。
ここまでこれたのも、苦しみながらも他人である俺のことを思ってくれたエリザのおかげだ。
常に変わることなく勇気を与えてくれた。エリザには俺はどれだけ感謝しなければいいか分からない。
だから、今度は言葉じゃなくて行動で示す!
それが今の俺がなすべきことだ!
「強力な回復魔法を隠し持っていたのか? いや、こんなこと……は? まさか! あの小娘か」
「気付いたのか?」
「俺としたことが完全にうかつだったな」
「俺たちの絆の力をなめないほうがいい……そして、あんたは生まれ変わった俺に負けることとなる」
「何を言うか! そんなこと言うのは俺のHPを0にしてから言え!」
再び俺とアカギのデュエルが開始された。
さきほどよりも剣と剣がぶつかりあう速度も速まり激しさも増した。
レベルもステータスも装備も変わっていない。新しく取得した魔法もない。なのに、さっきよりもアカギの攻撃を見極められる。
さらに、あの一撃が重かったアカギの大剣による攻撃も簡単に受け止められた。
「な、何が起こっている?」
「残念だな……お前の攻撃はもう俺には通用しない」
「まさかそれもこの光の影響と言うのか? ぐ……仕方がない」
すると、アカギはさきほどと同じように俺と距離をとった。
これは、そうかあれを再び使うのか。
一度は俺を負かせた魔法である<神水>(アポカリプス)名前の通りこの街における最強の魔法。
あれを二回も使えるということはやはりあいつはトッププレイヤーの魔術師。それは認めざる得ない。
ただ、今の俺はさっきの俺とは一味違う。祈りの力を授かった。
今ならあの魔法も受け止められる、いや相殺できる自信がある。
「ここまで俺を楽しませたやつはお前が初めてだ……本当に惜しい男だ」
「あんたこそ反則級の強さだぜ……あんたがもし正義のためにその力を使ってるんだったらいい戦友になれたんだけどな」
「お互い勿体無いということだ……さぁ! 遊びはこの辺で終わりとしよう! <神水>(アポカリプス)!」
アカギが迫力のある声でこう唱えると俺の周りに無数の槍があらわれた。先ほどと同じだ。これらはかわしていては間に合わない。槍が俺に追いつくまでに相殺……弾き飛ばすほどの速さと威力のある技が必要だ。
俺は持っているカーナベルを握り締めた。
そして、俺も切り札の武器スキルであるあれを唱えた。
「<海の嵐>(ウォーターサイクロン)」
「やはり、そうきたか! だがその程度の魔法では俺の神水によって作られた槍の速さには追いつけないし、威力も足りないと思うぞ?」
確かにそうだ。こいつの作り出した槍に対抗するためには、もっと強い魔法が必要だ。だが、さっきと同じものと思ってもらっては困る。
これが、生まれ変わった俺のウォーターサイクロンだ!
俺の唱えたウォーターサイクロンは激しく渦を巻いていた。渦潮といった方がよいのだろうか、地上と違い水中ではこの魔法は威力を発揮していた。
そして、驚くことにアカギの唱えた魔法によって作り出された無数の槍は俺に当たることなく、全て弾き飛ばしてしまった。
「はぁ……? 俺の魔法がそんなに簡単に破られただと?」
「海の嵐の前では最強魔法によって作られた槍も無意味だったようだな」
「ばかな……こんなことありえない」
「形勢逆転かな? 今度はお前が追い詰められたな」
とは言っても残りの酸素ゲージも少なくなってきた。これ以上の長期戦はまずい。
そう言えば最初は疲れを感じなかったが、精神的にも肉体的にも疲れを感じてきた。
きっとここまでの戦いによるアカギの行為と慣れない水中での戦闘による影響だろう。
そして、俺は剣を構えるとあることに気付いた。ステータス画面が黄色く光っており何ごとかと思ってみて見た。すると、そこには<新スキルを取得しました>と表示されていた。
それを見た瞬間に俺は勝ちを確信した。
これは、俺にとっての朗報。そして、あいつにとっての悲報。
この新しく取得したスキルで決めてやる! あいつのギルドも悪事もこれで終わりだ。
俺は一気にその場から加速してアカギに突っ込んで行った。
正面から何も小細工はなく、俺はおびえることもせずに突っ込んで行った。
「ばかな……あんな真正面から行くなんて」
「シロウ……お願い!」
「何を考えている……いやこれはむちゃくちゃな行動ではない! 勝ちという確信があるからこのような……」
「終わりだ! これで今までのお返しをするぜ……<青龍の雷>(ドラゴンサンダー)!」
新スキルドラゴンサンダー。強力な雷による攻撃魔法であり、自身の装備武器にも雷属性が投与されるというものだった。そして、それは空を上る龍の雷のようだった。
唱えられた瞬間に雷はアカギに瞬時に向かっていき、それについていくように俺も雷属性が投与されたこのカーナベルで何回も斬りつけた。
雷による影響なのか? アカギは動きを止めて何も抵抗することなくただ俺の攻撃を受け続けた。
「これでラストォォォォ!」
「ぐ! ぐぉぉぉぉぉぉ!」
最後の一撃。これによってアカギのHPは0となった。
ついに俺は見事な大逆転勝利であの赤い雨のリーダーアカギに勝った。
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